秩父三社の宝登山神社へお参りします。
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祈りを込めて、GPS対応の三十四観音巡礼地図を作りました。江戸時代の道しるべ石を、今の時代に合う形でそっとよみがえらせる。この思いが、サイトのテーマになっています。
旅の途中でふと立ち寄った店の雰囲気が良かったり、料理にしても期待以上のものが出てきたりする。そんな非日常の幸福感は、本来観光地であればあるほど得にくいものですが、ごく稀にその期待を大きく上回ることがあります。例えば、浅草寺の人形焼や、香取神宮の草団子などは、今では私の中で半年に一度の恒例行事となっています。
グルメを目的にそこまで出向く――すでに参拝は二の次になっているのかもしれません。
そして、秩父札所の巡礼でも、同じような体験が何度もあります。古くから「蕎麦」という看板を掲げて営業されている店であれば、どこに入っても美味しい。それには理由があって、秩父地域はそばの栽培に適した気候や土壌に恵まれています。秩父札所三十番に向かう巡礼道脇の蕎麦畑では、6月と9月の開花時期になると、一面に広がる白い花を見ることができます。
ただし、全体の生産量はそれほど多くないため、店で出てくる蕎麦は地粉100%とは限りません。それでも満足度は十分に高いと感じます。
とはいえ、今回は蕎麦の話ではありません。そこで出会った「小鉢」の話です。
札所二十九番を過ぎると、荒川・小鹿野・皆野エリアに入ります。国道140号から離れた巡礼道は交通量も少なく、歩くには快適ですが、食事を取れる店は限られており、「食べられるときに食べる」という覚悟が必要になります。
巡礼道の中間地点(約45km)を過ぎたあたり、武州中川駅近くの踏切を渡ってすぐの場所に、JAが運営する「そば道場 あらかわ亭」がありました。
何も考えず、栄養補給のつもりで暖簾をくぐり、迷うことなくセットの蕎麦を注文。注文は券売機で食券を購入し、窓口に提出するスタイルです。その際、「お茶と小鉢(一人一個)はセルフです」と案内されました。
待ち時間に、お通しのような感覚で小鉢に手を伸ばすと、これが驚くほど美味しい。見た目は野沢菜漬けに似ていますが、シャキシャキとした食感で、唐辛子の辛味と魚の出汁が絶妙に効いています。もちろん蕎麦も美味しいのですが、この小鉢のインパクトが強すぎて印象が霞んでしまうほどでした。
いったいこれは何なのか――その正体は「しゃくしな(杓子菜)」という野菜でした。
葉の形が杓子(しゃもじ)に似ていることから、その名が付けられたそうです。スーパーで見かけることは少ないですが、明治初期に中国から伝わり、耐寒性の強さから秩父で広く栽培されるようになりました。どことなくチンゲンサイにも似ています。
「隣のJA直売所で販売している」と聞き、立ち寄ってみることにしました。
荒川エリアの生産者が加工した商品も並んでいましたが、店頭に掲げられていた油炒めのレシピに惹かれ、JAちちぶ皆野農産物加工センターで製造されたしゃくし菜の塩漬けを購入しました。
栄養面でも優れており、βカロテン、カルシウム、ビタミンKをはじめ、低カロリーで食物繊維も豊富。発酵食品として長期保存が可能な点も魅力です。
素朴ながらも体にうれしい栄養がしっかり詰まった、秩父ならではの味。巡礼の途中で出会ったこの一品は、お土産としてもぜひおすすめしたい存在です。