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【2023年版】秩父の熊出没情報と究極の対策

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【2023年版】秩父の熊出没情報と究極の対策

秩父クマップ2023年版

令和5年(2023年)は早い時期からブナの凶作が伝えられていて、東北地方の各県では秋以降の熊に対する注意喚起がなされていました。蓋を開けてみれば予想どおりの結果となり、熊被害の件数も記録的なものになっています。また、今年は猛暑の記録も次々と塗り替えられ収穫期の作物にも大きな影響を与えました。里山と言ってもいい拙宅の庭にある柿やみかんもすべて落ちてしまいまして、熊にとっては、奥山にも里山にも採食するものがないという特殊な状況が生まれた年になったんですね。

秩父クマップの目撃情報は平成30年までの記録しかありません。こちらで2023年の熊出没情報を追加しますので参考にしてください。

【2023年版】秩父近郊の熊出没マップ

秩父市 小鹿野町 横瀬町 皆野町 長瀞町 寄居町 小川町 ときがわ町 越生町 毛呂山町 日高市 飯能市の熊出没情報から抜粋

熊による人身事故を防ぐ究極の対策

秩父で熊に襲われた事例

秩父市内のクマ目撃情報は、11月20日現在で昨年の31件を大きく上回る70件となっていますので、埼玉も異常事態であることは間違いありません。でもそれは、人々の意識の中にクマの恐怖があることで、気が付かないものに気づく、今まで見えないものが見えるようになったと考えたら恐ろしいことですが、やはり、埼玉県の秩父地域も環境の変化があったと考えるのが自然です。ただ、人的被害が少ない事を考えれば、東北地方とは異なる熊の生息環境があったということではないでしょうか。言い換えれば、クマの採食環境は充足していて、個体数の増減もそれほど極端な変化は無かったものと思われます。

秩父クマップでは、クマのほうでヒトを避けていると申し上げましたが、熊は危険な生き物です。絶対に侮ってはいけません。連日に渡るクマの目撃や被害の報道は、雪の便りが届く11月になっても留まるところを知らず、【穴持たず】という冬眠しない熊の存在もあるようです。また、人に慣れた【アーバンベア】と呼ばれる個体もあり、市街地近郊を生息域とする存在も確認されているようですので、今回は、過去に遡って埼玉県の熊による人身事故の被害状況を調べてみることにしました。

秩父近郊の熊被害

秩父市、埼玉県警察本部のホームページから抜粋

被害状況まとめ
  日時 標高(m) 自損(間接的事故) 親子熊
事例1 令和5年6月 1500【生息域】  
事例2 令和4年10月 1160【生息域】  
事例3 令和3年7月 970【生息域】  
事例4 平成30年10月 1400【生息域】  
事例5 平成28年10月 810【生息域】    
事例6 平成28年8月 320  
事例7 平成28年5月 1670【生息域】    
事例8 平成26年8月 260  

事例から考えられる対策

上記の事例は、インターネット上で確認できる埼玉県で熊に襲われた例です。平成26年から9年間で8例、秩父近郊で起こってしまいました。それまでは、地元の方に目撃情報や具体的な被害を聞いても「猿と間違ったんじゃないか」「獣害はないよ」など、緊迫感のない会話に終始したと記憶していますが、最近では少し様子が変わってきているように思います。

事例を見ると越冬中の11月から4月までの人身事故はなく、市街地での目撃情報もほとんど無いので【穴持たず】の存在は無いと考えていいと思います。また、【アーバンベア】の実態を把握するのは難しいことですが、5月に4番札所付近、6月に羊山公園での目撃情報があるのは事実ですので、クマの生息域が拡大しているのは間違いありません。

熊はヒトの顔面を狙う

新聞やテレビの報道などで使われる重症度の分類は、入院さえしなければ軽症になるとのことです。クマの被害はプライバシーもありけがの深刻度やすべての状況が、文面から伝わるものではないことを肝に銘じるべきだと考えます。高度な医療機関から遠い奥山では、絶体絶命の最終的な局面で非常に難しい選択を瞬時に迫られることになります。クマはヒトの顔面を狙って攻撃してきますので、事故後の人生に大きな重荷を背負うことになるからです。無抵抗であれば、うつ伏せ首ガード法での「死んだふり」は効果的ですが、それは顔面と脳に近い部分を守って致命傷を避けるということでしかなく、ヒトはクマの鋭い爪や牙の前に為す術がないのが現実で、熊よけ鈴も熊撃退スプレーも100%有効なものではなく、個体差も含めて全て熊の気分次第ということになるわけですね。

間接的事故による負傷

不覚にも山中で熊と遭遇したら、まずは距離の確保を優先し熊の方を見ながらゆっくり後退しましょう。猿やハクビシンなどでも野生動物は威嚇をします。ボクシングのフェイントのように、相手に飛び跳ねて襲うフリをするんですが、そこで背を向けたり少しでも動けば、自分より弱いと判断するんだそうです。ただ注意すべき点が一つあって、山の後ろ歩きはとっても危険です。太い根の張る傾斜地を後退するイメージを持てるかどうか、事前にトレーニングをおこなった方がいいかもしれません。上記事例の中でも、8例中2例が間接的な自損によるものだということを覚えておいてください。

熊の生息域

山ガールという流行も少し落ち着いた平成27年に、妙法ヶ岳(三峯神社奥宮)に登りました。そこで驚いたのは、老若男女を問わず単独での登山(参拝)が多かったこと、それと熊よけ鈴の装着率が40%くらいだったことにビックリしました。今では考えられないことですが、熊のテリトリーに入って行くということ、熊からすれば排除するべき対象であることを自覚するべきだと思います。8例中の6例が標高900m付近、もしくはそれ以上のツキノワグマの生息域で起きているんですね。秩父湖を止めている二瀬ダムの天端が標高540m、三峯神社が1080mになりますので、ダムより上に登る場合は、単独での行動を避けて熊よけ鈴はもちろん、熊撃退スプレーも必需品として、心に余裕をもって秩父の山々をお楽しみいただきたいと願います。

親子熊は危険

8例中の4例が親子の熊だったことも注目すべき点です。昔から親子熊は危険だ言われていて、山中で偶然親と子の間に入ってしまった場合は最悪のケースになりますので、子熊を見つけたら特に注意しなければなりません。東北地方では親子熊が3頭同時に襲ってきた例もあります。もし近い距離で突発的な遭遇をしたら、まずは動かずに身を隠すことを考えましょう。準備できる時間があれば爆竹が効果的です。野生動物に絶対的な信用などあるはずもなく、どこで豹変するかは、オスやメス、成獣や幼獣などの個体差や季節によっても違うため、距離がある場合はすぐに立ち去るのが最善の策です。

熊は戻る(複数攻撃)

山中でクマに遭遇する動画がありましたので、下記のリンクを是非ご覧になってください。場所は埼玉と山梨になります。埼玉の方は上記の事例2に当たり、親と子の間に入ってしまった最悪のケースですが、被害者が登山用のヘルメットを着用していたこと、クマの廻り込む余地がなかったことなどが幸いして重症化を防ぐことができた事例です。もう一つは渓流釣りの川の中でクマと遭遇してしまう動画になります。この二つの動画で興味深い点は、クマが自分の逃げ場を確認しながら何度も攻撃を繰り返す部分なんですね。クマもヒトを避けているという行動の一つの表れなのだと思います。被害者がクマと正対し動じなかったことが功を奏し、事なきを得たということに尽きるのではないでしょうか。背中を見せて逃げていたら、クマは習性で動くものを追いますので、重大な事故につながったかもしれません。

秩父札所31番から西約9km 二子山での遭遇
【「Bear attacks climber - 登山者と熊」 登山中に熊に襲われた】
山梨県の渓流釣りで熊急襲
【「Masayuki Matsuyama」【恐怖】 攻撃してくる熊が速すぎる "Bear Attack"】
地域の違い

令和の時代に入ってから、クマによる人身事故が両神山近郊で連続して起きている部分は注目すべき点です。秩父市大滝地区(三峰山近郊)ではほとんど起きていないことも興味深いところで、事例数が少ないので結論を出すには理由が乏しいように思いますが、ひょっとしたら個体差の影響があるかもしれません。北海道のマタギの話によると、クマはヒトを復讐の対象にしたり、足音を消して近づいたり、同じ足跡の上を踏んで戻ったりと漁師の裏をかくのだそうです。クマは想像以上の賢さをもっているんですね。攻撃性の強い個体の存在もあると考えれば話は簡単ですが、手負いになったクマ、もしくはその遺伝子が残されたということであるならば、より深く考えさせられる物語になりそうですし、人間世界の写し鏡になっているのかもしれません。

ココがポイント

奥山に入山する場合、単独はダメ!熊撃退スプレーは2本以上必要。爆竹もあり。

参考文献

  • 米田一彦 『熊が人を襲うとき』 つり人社
  • 姉崎等・片山龍峯 『クマにあったらどうするか』 筑摩書房

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