【2024年版】秩父の熊出没情報と前年度との比較
秩父クマップ【2024年版】なぜ熊は減ったのか?
令和5年(2023年)は、熊の出没が激増した年になり、結果として、熊の存在をより身近なものにする大きな転換点となりました。ところが、令和6年に入ると一転して、熊被害の報道も少なくなり、出没件数も半減しているというのです。一方、今年の夏も昨年同様、猛暑が続きました。作物の価格にも大きな影響を与えた夏の日差しは、ついこの間のことです。気候の変化という点では、さほど変わらないのに、熊が半減した理由、それは一体どういうことなのでしょうか。
【2023年版】秩父の熊出没情報と究極の対策に2024年の熊出没情報を追加したものを掲載しますのでご覧ください。
山の実りと熊の出没は関係する
秩父クマップでも少し触れましたが、東北地方では、春のブナの開花が、秋以降の熊の出没に、大きく関係していることが、過去のデータからわかっています。ブナの開花と結実はほぼ同じで、秋の実(ドングリ)が豊作であれば熊の出没は少なく、凶作であれば里山や市街地への出没は増えるわけですね。要するに熊の出没頻度は、春の開花によって想定できるということになります。ただし、大豊作の翌年は、必ず大凶作となったり、豊凶を繰り返すのが大自然の不思議なところで、なぜそうなるのか明確な理由はわかっていないのが現状のようです。
東北地方の結実データは秩父でも一致していた!?
熊が食すドングリはブナだけではありません。秩父山地にはコナラやミズナラなど、植生帯の違う樹木が標高500mから1700mの範囲に生育し、それに加えて、クリやヤマボウシなども確認されているんですね。熊は同じ年度内で樹種による豊凶の違いがあれば、活動域を変えて移動します。それに対して、生息域でブナやミズナラなどのドングリが豊富にあれば、標高帯を下げることもありません。
その点を踏まえた上で、東北地方のブナの結実と、秩父の熊の出没が、どの程度連動するのか調べてみることにしました。
西暦(和暦) | 秩父市熊目撃数 | ブナの結実予測 |
---|---|---|
2024(R6) | 33 | 並作~豊作 |
2023(R5) | 73 | 大凶作 |
2022(R4) | 31 | 並作~豊作 |
2021(R3) | 25 | 凶作~豊作 |
2020(R2) | 25 | 大凶作~並作 |
2019(R1) | 34 | 大凶作~凶作 |
2018(H30) | 25 | 並作~豊作 |
2017(H29) | 18 | 大凶作~並作 |
2016(H28) | 35 | 皆無~凶作 |
2015(H27) | 27 | 並作~豊作 |
2014(H26) | 33 | 皆無~凶作 |
2013(H25) | 20 | 並作~豊作 |
2012(H24) | 45 | 皆無~並作 |
熊目撃数は秩父市役所、結実予測は林野庁東北森林管理局
のウェブサイトをもとに当サイトで作成
上記は、2012年(平成24年)から2024年(令和6年)までの、ブナの結実予測と秩父市内の熊目撃数の比較になります。参考程度に見ていただければ良いかと思いますが、ブナの結実が大凶作または皆無であれば、結果は一目瞭然ですね。また、昨年の熊の大量出没(73頭)から今年半減(33頭)した理由も、ブナの結実予測(並作~豊作)を見れば疑いの余地はありません。
以上より、確実に言えることは減ったわけではなく、普通に戻ったということと、豊作の翌年は凶作になることから、来年(2025年)は特段の注意が必要です。
【2024年版】秩父で熊に襲われた事例
- 【集落の中で事故発生】
- 令和6年8月、小鹿野町で熊による事故が起きてしまいました。
熊は行動範囲が広くなった年でも、冬眠時には元の生息域に戻ります。簡単に言えば、山梨の熊が秩父まで来たとしても、また冬になれば、山梨まで戻ってしまいます。つまり、地域固有の遺伝子は維持されるということなんですね。今後も【地域の違い】は、注意深く見守りたいと思います。
【地域の違い】【2023年版】秩父の熊出没情報と究極の対策ー事例から考えられる対策
日時 | 標高(m) | 奥山 | 里山 | 集落 | 親子熊 |
---|---|---|---|---|---|
令和6年8月 | 620 | ◯ | ◯ | ||
令和5年6月 | 1500 | ◯ | |||
令和4年10月 | 1160 | ◯ | ◯ | ||
令和3年7月 | 970 | ◯ | ◯ | ||
平成30年10月 | 1400 | ◯ | ◯ | ||
平成28年10月 | 810 | ◯ | |||
平成28年8月 | 320 | ◯ | |||
平成28年5月 | 1670 | ◯ | |||
平成26年8月 | 260 | ◯ | ◯ |
秩父山地でも東北地方の結実予測は熊出没の有益な情報!
参考文献
- ツキノワグマ出没予測マニュアル 独立行政法人森林総合研究所
- 村上雄秀 宮脇昭「秩父山地のイヌブナ,ブナ林について」 横浜国立大学学術情報リポジトリ